光の行方 〜 賢者の石編 〜    6


その日の夜、ソードがの部屋を訪れ、真っ黒な丸い物を渡した。

「これは何?…卵?」

「分からん。お前の母、ルリ…瑠璃から預かっていた物だ。お前が杖を買った次の日の夜に渡すよう頼まれた」

『杖』という言葉には内心びくっとした。

「何で杖を買った次の日なのかしら…?」

「それも分からん。…もし何か分かったら話してほしい」

「え、えぇ」

ソードの澄んだ真剣な目に、心の奥を覗かれそうな気がしては緊張した。

この卵が何か分かったら、杖のことも話すかもう一度考え直そう…。

「あ!卵のこと、お兄様たちは知ってる?」

「いや、知らない。話すかどうかはお前が決めなさい」

それだけ言うとすぐにソードは部屋から出て行った。

「おやすみ、」

「おやすみなさい、お父様…」





「これは何かしら」

ソードが出て行った後は黒い球体を眺めた。

が両手で持つのにちょうどいいくらいの大きさ。意外と重く、とても硬かった。

卵の形をしたただの大きな石のように見えるが、は卵だと信じて疑わなかった。

まず杖でつついてみた。

何も起こらない。

少し強めに叩いてみた。

やはり何も起こらない。

「杖は関係ないのかしら?それとも何か呪文が必要なのかしら…」

が途方にくれてもう一度卵を持ち上げた瞬間、ある言葉を思い出した。



「これはね、私オリジナルの魔法なのよ」

「おりじなる?」

「そう。私しか知らない魔法。かけた封印を解く呪文。」

「え?え?」

「分からなくてもいいわ。そのうち分かるようになるから。

忘れてもいいわ。必要な時にはきっと思い出せるから。

…このことは誰にも言っちゃ駄目よ。」



「2人だけの秘密――そう言ってお母様は笑ったんだったわ」

は杖を卵に向けると、思い出した呪文を唱えた。

「『止められた時を動かし、今再び我が元へ――解』」

杖からやわらかい光があふれ出し、卵を包んだ。

何がおこるか…どきどきしながらは待った。

光が消えた後もしばらく見ていた。

が、何もおこらなかった。

「な、何で?魔法失敗しちゃったのかしら…?」

しばらく待ってみたがなにもおこる気配がなかったので、は諦めた。

卵をハンカチに包んでそっとドレッサーの上に置き、寝てしまった。








言うまでもなく呪文はオリジナルです。謎がいっぱいのヒロインのお母さん。



戻る ホームへ 次へ


おもしろい!続きが読みたい!と思ってくださったら是非、投票&拍手をお願いします。
更新のペースが上がります。