光の行方 〜 賢者の石編 〜    4


が部屋に戻ると薄汚れた毛叩きのようなものが床に転がっていた。

「…!エロール?!」

それは年老いたふくろうだった。

「このふくろうに長距離は無理だってあれだけ言ったのに…ベッキー!」

が呼ぶとすぐにパチンという音と共に屋敷しもべ妖精が現れた。

「はい、お嬢様」

「悪いんだけど、このふくろうを回復させるのにいい薬とか持ってきてくれる?」

「はい、お持ちします」

そういうとベッキーはまたすぐに消えた。

「良く頑張ったわね。今薬持ってきてもらうから」

そう言いながらそっとなでるとエロールは微かに鳴いた。

はエロールから返事が返ってきたことに安心して手紙を開けた。









いつになったら遊びに来てくれるんだい?

ママもパパもジニーも毎日そわそわしてるし、

ビルは残り日数が少ないってはらはらしてる。

ジョージとフレッドなんか君に会えないもんだからいらいらしてるよ。

もちろん僕も君が来るのを楽しみにしてる。

でも僕以上に皆が落ち着かないから僕が代表して

手紙を書くことにしたんだ。

エロールには悪いけど、これ以上あの2人のいたずらが

エスカレートするのは勘弁して欲しいからね。

うちはいつでもいいから、とにかく遊びにきて!

返事待ってます。


                            君の友達 ロン





「まあ!ロンは私が遠慮しないように大げさに言ったんだわ。でもちょうど良かった」

は机に向かうと返事を書き始めた。




ロンへ

お言葉に甘えて明日行ってもいいかしら。少し急すぎる?

お兄様たちは仕事が忙しくて行けないらしいから、私1人だけど…。

大丈夫だったら11時頃エロールもつれておじゃまします。

返事はこのふくろうに持たせてね。

やっぱりエロールにこの距離は負担が大きいみたい。

それでは。


                         あなたの友 





「お嬢様、お薬をお持ちしました!」

ちょうど返事を書き終わったところでベッキーが薬を持ってきた。

「ありがとう。助かったわ」

「それは良かったでございます!ベッキーは嬉しいです!ではまた用事があったら呼んで下さい」

ベッキーはまたすぐに消えた。

「働き者ね。…手紙を出さなきゃ」

家ではふくろうを何羽か飼っている。どれもおとなしく、威厳があるふくろうだ。

その中の一羽に手紙をつけた。

「ロンに届けて。返事ももらってきてね」

承知した、というように一声鳴くとふくろうは飛んでいった。

用のふくろうはいなかった。

「ホグワーツに行く時、誰か連れて行ってもいいかしら?」

たしかペットの持ち込みは可だったわ…そう考えながら歩いていたを父、ソードが目撃したことに

は気がつかなかった。





次の日の11時ぴったりには隠れ穴にいた。

「いらっしゃい、!」

モリーにおもいっきり抱きしめられ、

ジニーに飛びつかれ、

パーシーにまじめくさった(しかし少し赤くなった)顔で握手を求められ、

それを双子がからかいモリーに怒られ、

ビルに頭をなでられ、

ロンに言ったとおりだろ、と言われ…。



相変わらず隠れ穴はにぎやかで暖かかった。

そこの住人の熱烈な歓迎を受けながらは不思議に思った。

来るたびに思うのだけど、何でこんなに歓迎してくれるのだろう――お客を招くのが好きなのかしら…?

そしてようやくひと段落つく頃になってようやくは思い出した。

「あ!そうだわ。これ、父からです」

そういって箱をモリーに渡した。

「まぁ!」

箱には軽量化の魔法がかかっていたらしく軽かったが、中には肉がぎっしり入っていた。

「こんなにいただけないわ…」

モリーは戸惑ったように言った。

「モリーさん、気にしないで!このお肉の詰め合わせ、もらい物よ。大丈夫、悪い魔法はかかってないって」

「でも…」

「いいの。いつもお世話になってるし…。それに色々な所から色々貰うから、うちに置いてもあまっちゃうだけなのよ。

…でも確かにお肉ばっかりこんなにあっても困るわよね。なんでお父様、果物とかも入れなかったのかしら」

「困ったりはしませんよ!なんたってうちには食べ盛りの息子たちがこんなにいるんですもの。

とてもありがたい物ですよ」

「それなら良かったわ」

そういってはにっこり笑った。

その笑顔にその場にいた全員――モリーすら――見ほれていたことにはまったく気がつかなかった。

「それからこれ、エリオット兄様とエース兄様から」

そう言って手紙をビルに渡した。

「あ、あぁ」

は慌てたように手紙を受け取ったビルを不思議そうに眺めてから

「あ、ジニー!これ、私からのお土産!庭で育てたの」

そういって小さな花束を差し出した。

「わー綺麗…。なんて花?」

「これはね…」

そうしてジニーと盛り上がっていたは気がつかなかった。

手紙を読んでいったビルが顔をこわばらせたこと。

その手紙を兄弟たち全員が読み、そろってビルと同じような顔をしたこと。

「エース…相変わらずだな…」

「エリオットもだ…あのシスコン…」

そしてそろってため息をついたこともは気がつかなかった。





親愛なる兄弟諸君へ

いつもいつもが世話になって悪いね。

君たちにはとても感謝している。

これからもよき友人として仲良くしてやってほしい。

では体に気をつけて。

P.S 仕事が一区切りついたら僕も遊びに行ってもいいかい?


                        諸君の友 エリオット






ウィーズリー家の赤毛兄弟へ

が世話になる。

手を出したら呪いをかけてや

俺と兄貴を敵に回すということだけ覚えておけ。


               の兄 エース







全員がため息をついたと同時に手紙は自動的に燃え上がった。

「証拠隠滅か…。相変わらず抜かりない…」

もう一度漏れたため息はに手を出せない無念からか、恐怖からか、呆れからか…。

おそらく全てだろう。

妙に重苦しい空気を漂わせている5人を見てジニーとは不思議そうに顔を見合わせた。








ウィーズリー家訪問までと兄のシスコンっぷり暴露の回。

この兄たち本当は優秀です。


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