光の行方 〜 賢者の石編 〜    32


大量にグリフィンドールの寮の得点を失ってしまった日から、ハリー達は他の寮生達から離れて試験勉強に没頭した。

もはやクィディッチでさえハリーにとって楽しいものではなくってしまったようだった。
練習中も他の選手はハリーに話しかけないし、どうしても話さなければならない時も「シーカー」としかハリーを呼ばないのだ。
ハリーは遅まきながらも、もう二度と関係のないことに首を突っ込むのはやめようと心に誓った。




ある朝、朝食のテーブルに、ハリー、ハーマイオニー、ネビル、宛の4通の手紙が届いた。
全員同じ内容で、処罰は今夜11時に行う、というものだった。


その日の夜、4人はハグリットとファングを共に森の中にいた。
処罰の内容が怪我をしたユニコーンを見つけ助ける、というものだったからだ。
マルフォイは行きたくないと恐怖を隠しきれない声で文句を言ったが、ハグリットがそれを許すはずもなく、結局森の中に入ることとなった。

しかし、2組に分かれて探す、となった時にまたもめることとなった。
「僕はファングと一緒がいい。もちろんも一緒だ」
ファングの長い牙を見てマルフォイは言った。

「そんな!」
「ビビってるお前にを任せたりできないよ!」
「何だと?!」
慌ててそれを止めたハーマイオニーとハリーに、マルフォイは怒りの声を上げた。

そのまま喧嘩に発展しそうな様子を見て慌てては声をかけた。
「ストップ!落ち着いて。私は大丈夫よ、ファングもいるし」
「でも…」
「大丈夫だから。ね?」
マルフォイが引こうとしない様子を見て、はハリー達をなだめることにしたのだ。

「それなら、ハリー、お前さんも一緒に行ったらどうかね?」
ハグリットは続けてハリーの耳元で囁いた。
「あいつが何か馬鹿な事をしそうになったら止めてくれ。お前さんならあいつもうかつに手を出せないだろうからな」
ハリーはもちろんそれに頷いた。
ハリーも一緒だと知ってマルフォイは嫌そうな顔をしたが、の説得もありしぶしぶ納得した。

3人とファングは森の奥へ進んで行った。
40分も歩くと、木立がびっしりと生い茂り、もはや道を辿るのは無理になった。
血の滴りも濃くなっているようだ。

「見て…」
ハリーは腕を伸ばしてマルフォイとを制止しながらつぶやいた。
樹齢何千年の樫の古木の枝が絡み合うその向こうに見える、開けた平地に純白に光り輝くものがあった。

3人はさらに近づいた。それはユニコーンだった。
その美しく悲しいものにもう一歩近づこうとしたその時、ずるずる滑るような音がした。
音のした方を見ると、暗がりの中から、頭をフードにすっぽり包んだ何かが、まるで獲物をあさる獣のように地面をはってきた。
3人とファングは金縛りにあたように立ちすくんだ。
マントを着たその影はユニコーンに近づき傍らに身をかがめ、口からその血を飲み始めたのだ。

「ぎゃあああああ!」
「え?!ちょっ…!」

マルフォイは絶叫しての手を掴んで逃げ出した。
後を追うようにファングも逃げ出してきた。


「ちょっと待って!ハリーが…!」
とっさのことで抵抗できず、引きずられるように走っていただったが、掴まれた手を力の限りひっぱってようやくマルフォイの足を止めさせた。
そんなにマルフォイはまだ混乱が収まらないような様子で、それでも手は絶対に離そうとはせずに叫んだ。
「あいつだってきっともう逃げてるさ!そんなことより今はこの森の外に出るんだ!」
「でももし逃げそびれていたら…!」

そう押し問答をしていると、森の中から蹄の音が聞こえた。
「早く逃げなきゃ!さっきの奴かもしれないぞ!!」
「まって!さっき奴はずるずると這っていたわ。蹄なんて…」
「騒がしいから何かと来てみれば…」

森の暗がりから出てきたのは腰から上が赤い髪に赤いひげの人の姿、腰から下はつやつやとした栗毛に赤みがかかった長い尾をつけた馬という不思議な生き物だった。
もマルフォイもこの生き物がケンタウルスという種族なのは知っていた。

そのケンタウルスはの顔を見て少し驚いたように言った。
「おや、君は家の最後の子だね?」
「最期の子?…あぁ、確かに私が末っ子よ。今のところ、私より後には誰も生まれていないわ。
ところで、私を知っているあなたは誰?」
「私の名はロナン。
今この森は危険だ。ついてきなさい、森の外まで案内してあげよう」

「ちょっと待って!ハリーがまだ…」
「ポッター家の子ならフィレンツェ……他のケンタウルスがすでに森の外へ連れ出したよ」
「よかった…。それなら案内、お願いします」
とマルフォイはロナンに先導されて森を無事でることができた。


森を出た所で、心配そうなハーマイオニー達と一緒に、やはり心配そうな顔をしたハリーを見つけ、はほっと安堵のため息をついた。




ビビりでハリーは置いて逃げたけど、好きな子は置いていかなかったマルフォイ君。笑

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