光の行方 〜 賢者の石編 〜    31


ハリーとハーマイオニーがドラゴンを運んでいる間、は談話室で2人が帰ってくるのを待つことにした。
暖炉のそばの椅子に腰かけて暖炉の火を見つめていると、背後で物音がした。
振り返ったが見たのはネビルが寮から外に出ようとしている後姿だった。
は慌ててネビルを追いかけた。

「ネビル!」
!ハリーはもう行っちゃった?!」
ネビルは普段からは考えられないほどの勢いでに尋ねた。

はどきっとした――まさかネビルはノーバート…ドラゴンのことを知っているのだろうか?
「え?何の事?」
とぼけて見せたにネビルは必死で言った。

「僕知ってるんだ!ハリーがドラゴン…」
大きな声で叫ぶように言ったネビルの口を慌てては抑えた。
そのまま耳を澄ましてみたが廊下には2人の他に人の気配はないようだ。

それにほっと安堵の溜息をついてはネビルに向き直った。
「ネビル、それをどこで聞いたの?」
「マルフォイが言ってたんだ。ハリーを捕まえるって。だから注意しろって教えてあげなきゃ」

そう言いながらネビルの手が震えている事には気がついた。
おそらく規則を破ることと、この暗闇を一人で歩くことに対する恐怖の為だろう。
「ネビル、待って!もし見つかったら大変よ!ハリーは大丈夫だから私達は戻りましょう」

ネビルの手を握って戻ろうとしたが、ネビルは頑として自分の主張を曲げようとはしなかった。
ネビルが自分の持てる精一杯の勇気を振り絞っているのがわかる。
その気持ちは嬉しいのだが、これでもしネビルがフィルチにでも見つかったら大変なことになる。

そんな押し問答をしていると突然まぶしい光が目に入った。
「あなた達、何をしているんですか!!」
そこには目を吊り上げて怒りを露にしているマクゴナガル先生の姿があった。





マクゴナガル先生はハリーとハーマイオニーとネビルに1人60点の減点を申し渡した。
は自分を止めようとしただけだとネビルが必死に訴えたが、は40点減点された。
部屋に戻るまで、ネビルはずっとに謝り続けた。

「気にしなくていいのよ。あなたはハリーの為を思って勇気ある行動を起こしただけだもの。
ただ今回は運が悪かっただけ」
は慰めたが全く効果がなかったようだ。

部屋に戻った後でとハーマイオニーは情報を交換し合った。
はネビルを止めようとしている時にマクゴナガル先生に見つかったことを話した。
ハーマイオニーはノーバートは無事引き渡せたものの透明マントを被り忘れてフィルチに見つかったことを話した。

「ごめんなさい…ごめんなさい…」
話し終わってからハーマイオニーは、長いこと泣きながら謝り続けた。
それはへ向けられた謝罪のようでもあったし、グリフィンドール生全員に対する謝罪のようでもあった。

「そんなに自分を責めないで。ノーバートを引き渡すなんて大仕事を終えた直後ですもの。気が緩むのも仕方がないわ。
私の方こそただ待っているだけだったのに足を引っ張ってごめんなさい」
は悪くない、とだけ言うと、ハーマイオニーは再び謝り続けた。

「1人で60点も減点されるなんて前代未聞よ…全員合わせたら220点も減点なんて…!」
泣き伏すハーマイオニーの頭を撫でながらは言った。

「でもね、よく考えてみて。今までハーマイオニーがどれだけ得点をもらったか。
あなたは授業中先生にされた質問で答えられなかったことはなく、自分でも積極的に手を上げたりしていたわ。
正確に点数を数えることはできないけれど、60点以上点をもらっていることは確かよ」
これが私でなくエリオット兄様がったら、きっと数えることもできただろうに。

そう考えては残念に思った。
「ねえ、終わってしまったことをいつまでも悔やんでも仕方がないわ。
それよりこれからどうするかが大切よ」
「これから…?」

そのの言葉にハーマイオニーがゆっくりと顔をあげた。
そのことに少しほっとしては続けた。

「えぇ、そう。減点されたことをなかったことにはできないけれど、新しく点数を稼ぐことはできるわ。
まだ時間はある。これから頑張ればきっと60点分取り戻すこともできるわよ」
その言葉にハーマイオニーの目に光が戻ってきた。

「確かに、そうね。の言う通りだわ。
私にできることはできるだけたくさんの点をもらって失った点を挽回することよね」
「ええ!ハーマイオニーならできるわ。一緒に頑張りましょう」
「…ありがとう

は最後にようやくハーマイオニーの笑顔を見ることができた。



はハーマイオニーほどは落ち込んでいなかった。
突然220点も減点されたのを見たグリフィンドール生は驚き悲しむだろう。
確かにそんな様子を想像すると胸が痛む。
しかし、元々寮杯争いに興味のなかったは、グリフィンドールが最下位になったこと自体についてはさほどショックを受けなかったのである。

そんな軽い気持ちでいたは翌日の周りの反応にひどく驚いた。
どこから漏れたのかはわからないが、大量減点の原因がハリー達にあることは全校に広まっているようだった。
ハリーがどこへ行っても隠されることのない悪口が聞こえてくる。
逆には同情的な視線を受けることが多かった。
をハーマイオニー達から離そうと女の子たちがだけを引っ張って連れていくことさえあった。

ハリー達はいたずらや悪ふざけの為に減点されたが、はそれを止めようとしたのを見つかって減点されたのだと思われているらしい。
が止めようとしたのは、ハリー達ではなく、ハリー達を止めようとしたネビルだ。
そしてハリー達との関係は共犯者と呼ぶべきものである。

「それは違うわ!」
周りの態度を不思議に思っていたが、そんなでたらめな噂話を知ったのはだいぶ時間が過ぎた後のことだった。
噂話が本人に伝わるのは最後、というのはよくあることである。

ハリー達はいたずらをしたわけじゃないと叫びそうになったが、では何をしたのだと聞かれると答えようがないことに気がついて口を噤んだ。
代わりに自分もハリー達と同罪なのだと、噂話を否定して回った。
少しでもハリー達へ向かう矛先が減ればよいと思ったのだがほとんど効果は見られなかった。
仕方がないので噂は放っておくことにしてなるべくハリー達の傍にいることにした。

一番辛そうなのは有名だったハリーだが、ハーマイオニーとネビルも苦しんでいた。
だがハーマイオニーはが提案した通り、周囲の冷たい視線にも聞えよがしに囁かれる悪口にも屈することなく授業中も発表を重ねた。
だがそんな周囲に傷ついていないわけもなく、一人で泣いているのを見つけ出してはそっと隣に座るのがの役目になった。

こんなに周囲が冷たい反応をするとは思っていなかったはハーマイオニーを逆に苦しませてしまったかと思い、あの提案を撤回しようとした。
しかしハーマイオニー自身は、大丈夫だからと言ってやめなかった。


先生から質問が出るたびに誰よりも早く、誰よりもまっすぐに手を挙げる。
そんなハーマイオニーの姿を見て、は彼女を尊敬すると同時に自分も頑張ろうと授業に集中した。



執着心が薄くのんき者なさん。周りとの温度差になかなか気づかない鈍い子です。

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