光の行方 〜 賢者の石編 〜 23
が女子トイレの扉を開けると、中から女の子のすすり泣く声が聞こえた。
個室の扉が1つだけ閉まっている。
「…ハーマイオニー?」
が恐る恐るハーマイオニーの名前を呼ぶと、相手のびくっとした気配が伝わってきた。
「そこにいるの、ハーマイオニーでしょう?」
「ひっく…」
「どうしたの?何か辛いことがあった?」
「…ひっく」
「お願いだから、扉を開けて出てきて…」
「…ひっく……」
しかしが何度話しかけても扉が開かれる気配はなかった。
「ねぇ、ハーマイオニー。私あなたに何かした?それで顔も見たくなくなっちゃった…?」
は最近のハーマイオニーの行動を思い返していた。
「何か気に障ったのなら教えて?そうしないと直せないし、謝ることもできないもの」
「は悪くない!」
それまで返事をしようとしなかったハーマイオニーが叫ぶように言った。
「わ、悪いのは私よ!
私だって、みんながなんて言っているか知ってるんだから!」
「ちょ、ちょっと待って!何のこと?」
「私なんてでしゃばりで、無神経で…どうせ友達もいない悪夢みたいな人間よ!」
「そんなこと、誰が言ったの?」
「みんな言ってるわよ!いいからもうほっといて!」
投げやりに叫んだハーマイオニーの言葉には悲しそうな顔をした。
「ほっとけないわ。あなたは認めてくれてないみたいだけど、私はあなたを友達だと思っているから…」
そのの言葉にハーマイオニーはさらに顔をゆがめて言った。
「なんでそんなこと言うのよ…?
いつもあなたはそう。優しくて、綺麗で、みんなの人気者で。
おまけに私の唯一の取り柄である勉強でさえもあなたには勝てない…!
覚えてる?マクゴナガル先生の授業の時。
私は予習をして、何度も練習をして、ようやく成功させることができたのよ。それをあなたはいとも簡単にやってのけた!
私は、私にないものすべてを持っているあなたを妬んだわ。
あんなに醜い感情が自分の中にあるなんて思ってもみなかった」
「ハーマイオニー…」
「わかったでしょう?もう行って。あなたが優しければ優しいほど私は惨めになっていくの」
ハーマイオニーの言葉を聞いては少し目を伏せて何事か考えた。
そして再び開いた口から出てきた言葉は全く突飛なものだった。
「……なぜ家が『記録者』なんてやってるか知っている?」
「え?」
「影響力を持ちすぎたから中立のものとしての立場をはっきりさせたかった、というのもあるけれど。
そこで歴史を書き残す仕事を選んだ理由は、異常なまでの記憶力があったから」
「記憶力…?」
「そう。特に直系の人間にはその特徴が色濃くでる。エリオット兄様なんて、一度でも見たものは二度と忘れないわよ。
である以上、勉強なんてできて当然。魔法使いが魔法を使えて当たり前なのと同じことよ。
私が何でも持っているなんてことはないわ。
前例のない、2人目の後継者の印、家の他の誰よりも劣る記憶力…。
私は欠陥部分ばっかりなの」
の言葉にハーマイオニーはあわてた。
「ご、ごめんなさい、そんなつもりじゃ…」
「いいの。みんながこんな私を受け入れてくれるから、私はそのことを気にしないでいられるもの。
ねぇ、ハーマイオニー。完璧な人間なんていないのよ。そして欠点しかない人間もいないの。
あなたは私が持っていないものをたくさん持っている。
それは努力家なところとか、責任感が強いところとか、他にもたくさん。
今まで私を友達と見れなかったのならもう一度言うわ。
『私とお友達になってください』」
「…やっぱりあなたにはかなわないわ…」
さっきと同じことを言うハーマイオニーの声はさっきとは違って穏やかなものだった。
そしてゆっくりとドアが開いた。
「こちらこそよろしく」
ハーマイオニーは少しぎこちなく笑って言った。
はそれを満面の笑みで迎えた。
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