光の行方 〜 賢者の石編 〜    22


「気がつきましたか?」

が目を開けた時真っ先に入ってきたのはマダム・フーチの厳しい顔だった。
「…ここは?」
「医務室です。覚えていませんか?あなたは箒から落ちてネビルの下敷きになったのです」
「ネビル!ネビルは無事?!」
なぜ自分が医務室にいるのかを思い出したはネビルの姿を探してベットの上に勢いよく体を起こした。
「無事です。傷一つありません。
彼はあなたを心配してべそべそ泣いていたので先に帰しました。
それにしても無茶なことをする。
無事だったからよかったものの、助けようとして2人とも死んでしまうことだってありえたんですよ」
「ごめんなさい…」
は謝りながら思った――でもまたああいう場面に遭遇したら、私はきっと同じ行動をとるわ。
そんなを見て溜息をつきながらマダム・フーチは言った。
「あなたが箒に乗るのがうまいことも、やさしい性格であることもいやというほど聞かされていましたが、無茶はいけません。
次こんなことをしたらあなたの兄たちに言いつけますよ」
疲れた、という顔をするマダム・フーチの脳裏には妹をべた褒めするエリオットとエースの姿がよみがえっていた。
「す、すみません」
マダム・フーチのその様子に、は兄たちの分も含めて再度謝った。



マダム・ポンフリーの注意も受けて、が医務室を後にした時にはもう夕食の時間になっていた。
食堂に向かっていたは誰かに呼び止められた。
!」

「もう大丈夫なのかい?!」
ハリーとロンは心配そうな顔でに走り寄った。
「えぇ、もう大丈夫よ。心配してくれてありがとう」
そう、にっこり笑うに2人は同時に安堵のため息をついて、と並んで食堂に向かった。





「まったく、は相変わらず無茶するよな。あの後大変だったんだぜ」
ロンはステーキ・キドニーパイを皿に取りながら眉をしかめて言った。
「そうだよ。ネビルとが医務室に連れられて行った後、マルフォイのやつ、ネビルの思い出し玉を奪ったんだ」
2人は、マルフォイがのことを心配してネビルに対してかんかんに怒っていたことは黙っておくことにした。
「それはハリーがうまく奪い取ったんだけど、勝手に箒に乗っているところを
マクゴナガル先生に見つかって、ハリーだけ連れてかれちゃって…。
そう言えばあの後どうなったの?」
「あの後は…」


ハリーはオリバー・ウッドに引き合わされたこと、寮代表のシーカーになったことを話した。
「すごいじゃない!それって異例のことよ!最年少の寮代表選手ね。確か100年ぶりくらいじゃなかったかしら?」
「…うん。ウッドもそう言ってた」
パイを掻き込むように食べているハリーとは対照的に、ロンはあまりに驚いて、感動してハリーをただぼーっと見ている。

来週から練習が始まるが誰にも言うな、とハリーが口止めしていると双子のウィーズリーがホールに入ってたのが見えた。
ハリーを見つけると2人は足早に駆け寄ってきて低い声で言った。
「すごいな、ウッドから聞いたよ。僕たちも選手だ――ビーターだ」
「今年のクディッチカップはいただきだぜ。も応援に来てくれよ」
「えぇ、もちろん!」
そして少し話すと双子はあわただしく去って行った。
それを見送っても部屋に帰ることにした。なんだかやたらと眠いのだ。
はベットに入りながら、『今日のことはお兄様たちには内緒にしておこう』と、固く心に誓った。





それから約2か月間、は平和な学校生活を送った。

ただ、ハーマイオニーが元気がないように見えることだけが心配だった。
は何度も話しかけようとしたが、そのたびに何かしら邪魔が入るのである。
ハーマイオニー本人に避けられることもあった。
原因がわからないだけにどうしていいのかは心底困っていた。



ハロウィーンの朝、パンプキンパイを焼くおいしそうな匂いが廊下に漂ってきてみんな目をさました。
「いい匂い!今日の夕食が楽しみね」
朝起きたは同室の3人ににっこり笑って話しかけた。
ラベンダーとパーバティーはその話題にのってきたがハーマイオニーはその輪に加わらず一人で部屋を出て行ってしまった。
「どうしちゃったのかしら、ハーマイオニー。最近全然私と話してくれない…」
何か怒らせる事したかしら、とが落ち込んでいる横で、ラベンダーとパーバティは少し気まずそうに顔を見合わせた。



「あら、ハーマイオニーがいないわ」
その日の午後の授業でハーマイオニーの姿を見つけることが出来なかった。
あの真面目なハーマイオニーが授業を休むなんてよっぽどのことがあったに違いない――。
は授業の後、大広間に向かうみんなとわかれて一人でハーマイオニーを探した。
寮の部屋、医務室、中庭…しかしどこを探してもハーマイオニーの姿は見つけられなかった。
もう大広間に行ったのか、とが大広間に行くとほとんどの生徒が席に着いていた。
そんな中パーバティとラベンダーがに駆け寄ってきた。
「さっき、ハーマイオニーがトイレで泣いていたの」
「まあ、そうなの?教えてくれてありがとう!ちょっと行ってくるわね」
「あの!」
駆け出そうとしたをラベンダーとパーバティが引き留めた。
「その、ごめんなさいって伝えておいてもらえるかしら?」
「かまわないけど、何に対する謝罪なの?」
「…言えばわかると思うから。後で自分でも直接謝るけど…」
口を濁した2人には自分が聞くべきではないことのようだ、と判断して伝言役を引き受けることにした。
2人にうなずくいて、今度こそハーマイオニーがいるトイレへ向かって走り出した。






もやもやしていたヒロインの悩みごと、次回ですっきりすると思います。


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