光の行方 〜 賢者の石編 〜 21
ハリーはハグリットとのお茶の後、あの包みについて何か知らないかに聞いてみることにした。
「、僕の誕生日にハグリットがグリンゴッツの銀行から引き取った包みのこと覚えてる?あれが何か知らない?」
「いいえ、知らないわ。でもよっぽど重要なものなのでしょうね。
713番金庫はグリンゴッツの中でもとくに厳重に警備されている特別金庫ですもの。でもなぜそんなことを聞くの?」
ハリーはハグリットとのお茶会で考えたことを全て話した。
「確かに泥棒が探していた物がハグリットが引き取った包みである可能性は高いわね。
ハグリットはあの時グリンゴッツよりホグワーツの方が安全だというようなことを言っていたし、
その包みが誰かに狙われているのなら、ダンブルドア校長先生がその包みをこの学校のどこかに隠している
のかもしれないわ」
は入学した日に湖の中で出会ったダンブルドアの、きらきらした目を思い出した。
あの人が守っているのなら、グリンゴッツより安全なのかもしれない。
「学校のどこか?」
「そう」
見当違いかもしれないが、校長先生が「近づくな」と言った4階の右側の廊下が怪しい。
近寄ると死んでしまう可能性もあると言っていたのだから、その包みを守るトラップなどが施されているのかもしれない。
はそう考えたが口に出すことはしなかった。ハリーは好奇心が強そうなので、確かめに行っては困ると思ったからだ。
「でもダンブルドア校長先生の手に渡ったのならそんなに心配することはないんじゃないかしら?
それに何かあっても今の私たちにできることはないと思うわ。
その包みを狙っているのはグリンゴッツに侵入できるほどの人物なのですもの」
「そう、だね」
頷いたハリーを見てはほっとした。
私たちのような子供がそんな大きな事件にかかわったりしないだろう。
はそう考えていたが、何か大きなことに巻き込まれてしまうような予感もしていた。
「また何かあったら話してね。できるだけ力になるから」
「うん、ありがとう」
頷いたハリーに笑顔を向けてはその場を立ち去った。
『飛行訓練は木曜日に始まります』
この掲示を見た時、はとても嬉しくなった。も箒にのるのが好きだったからだ。
「やだ、スリザリンと合同じゃない」
「本当!飛行訓練楽しみにしていたのに最悪!」
一緒にいた女の子達が口々に呟くのが聞こえた。
それを聞いては複雑な気分になった。
パンジーなど一部の女子はを睨んだり、わざと聞こえるように悪口を言ってきたりしたが、
その他の生徒はにはちょっかいをかけてこなかった。
友達になったスリザリン生も何人かいる。
だからスリザリンの弁護をしてあげたいとも思うが、魔法薬学の授業の態度などを見るとグリフィンドール生たちが
スリザリンを嫌うのも仕方ないように思う。
特にマルフォイなど、には相変わらず優しいのに、なぜハリーにはあんなに意地悪くなるのか分からない。
今まで、優しいマルフォイ――この言葉をハリー達が聞いたら鳥肌を立てそうだ――しか見たことがなかったは
戸惑った。
木曜日の朝食の時、ハーマイオニーは図書館で借りた「クディッチ今昔」で仕入れた飛行のコツを話し続けていた。
皆はうんざりした顔をしていたがは面白く聞いていた。
ネビルは一言も聞き漏らすまいと必死に聞いている。
そんなピリピリした様子を見せるハーマイオニーとネビルの緊張をほぐそうと、は話しかけようとした。
「ハーマイオニー、「、ふくろうがきたわよ!」
しかしその瞬間パーバティーが叫ぶように言って上を指差した。
ちょうどふくろう便の時間だったらしい。
皆それに夢中になってしまい、は話しかけるタイミングを逃してしまった。
その日の午後3時半、は多くのグリフィンドール生と一緒に校庭へ急いだ。
良く晴れた日で、は風をとても心地よく感じた。
生徒達は最近ようやくの笑顔に慣れてきていた。顔が赤くなるのは相変わらずだったが、硬直はしなくなっていた。
しかし、輝く長い髪をなびかせて、サワサワ波立つ草の上を歩くの姿はいつも以上に美しく、
うっかりその姿を見てしまった者の足は止まってしまった。
「ゴホン!」
白髪を短く切り、鷹のような目をしたマダム・フーチがそんな生徒達をみて咳払いした。
その音に我に返った生徒達は慌てて駆け寄る。
その場には、同じく咳払いで我に返ったスリザリン生が待っていた。
学校の箒は古くてボロボロだった。
は兄達やウィーズリー家の兄弟達の言葉を思い出していた。
色々言われたが、要約すると「学校の箒はぼろくて変な癖を持っているのが多いから気をつけろ」ということだ。
自分にあてがわれた箒を見ると、柄の部分に亀裂が入っているのが見える。
確かに気をつけた方がよさそうだ。そんなことを考えているとマダム・フーチの声が聞こえてきた。
「右手を箒の上に突き出して。そして『上がれ!』と言う」
みんな「上がれ!」と叫んだ。
の箒は勢いはなかったもののすんなりの手に収まった。
しかし周りを見てみると、飛び上がった箒は少なかったようだ。
そんな様子を見ているとハリーと目が合った。
ハリーは一回で箒を飛び上がらせることができたようだ。
「ハリー、凄いじゃない!初めてなんでしょ?」
「うん。でもきっと運がよかっただけだよ」
ハリーは照れて言った。
そのしばらく後、いよいよ飛ぶ時が来た。
マダム・フーチは笛を吹いたら地面を蹴るように、と言ったのだが、ネビルは先生の唇に笛が触れる前に
思い切り地面を蹴ってしまった。
「こら、戻ってきなさい!」
先生の大声をよそにネビルはシャンペンのコルクが抜けたようにヒューっと飛んでいった。
「コントロールができないんだわ…!」
はとっさにネビルに向かって飛んでいったが、追いつく前にネビルは箒から落ちてしまった。
はその落下途中のネビルを受け止めること成功した。
ネビルは右手をに両手でつかまれて箒からぶら下がっている状態になった。
その状態にパニックを起したのか突然ネビルは暴れだした。
「落ち着いて!大丈夫だから暴れないで!」
の腕力ではこれ以上支えきれない、と思った瞬間、ぱきっという音がした。
「え?!」
どうやら箒の亀裂が入っていた部分が割れたらしい。の腕より先に箒の方が限界に達してしまったようだった。
「う、うそ?!」
体が落下して行くのがわかった。
はとっさに受身を取ることができたので怪我はなかったのだが…。
その直後、鳩尾に強い衝撃を受けての意識はぷつんと途絶えた。
どのくらいの故障までなら箒は無事飛べるんでしょうね。
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