光の行方 〜 賢者の石編 〜 19
食事の後、グリフィンドールの1年生はパーシーに続いていくつもの階段を上り、隠しドアを通り抜けた。
いつまで歩けばいいのか、とホグワーツの広さに驚いていると、突然みんなが止まった。
ポルターガイストのピーブスがいたずらを仕掛けてきたのだ。
ピーブスはたくさんの杖を持って、意地悪な甲高い笑い声を上げ、1年生めがけて急降下した。
皆はひょい、と身をかがめたが、1人だけかがめなかった子がいた。
「、危ない!」
「…え?」
は眠さのあまり意識が朦朧としており、反応が遅れたのだ。
しかし、には杖もピーブスもあたらなかった。
「だって?!」
ピーブスが急停止したからだ。
「その髪と瞳の色!まさかお前、あの2人の妹のか?!」
「あの2人?」
まだ寝ぼけているような声を出すに代わってパーシーが言った。
「そうだ!の兄はエリオットとエースだぞ!」
「おおぉぉぉ!!」
ピーブスは苦しそうな声を上げると杖をネビルの頭の上に落として消えた。
「ピーブスには気をつけたほうがいい」
再び歩き出しながらパーシーが言った。
「ピーブスをコントロールできるのは血みどろ男爵だけなんだ。僕ら監督生の言うことでさえ聞きゃしない」
そこまで苦々しげに言った後、うって変わって愉快そうに言った。
「もっとも、家のエリオットとエースのことは恐れているらしいけどね」
が自分にあてがわれた部屋に入ると、そこには見たことがない女の子2人とハーマイオニーがいた。
「!」
「あら、ハーマイオニー!同じ部屋なのね、嬉しいわ」
驚いた声を上げたハーマイオニーには微笑んで言った後、例によって硬直している女の子2人に話しかけた。
「です。これからよろしくね。えーと、お名前を聞いてもいいかしら?」
「え、えぇもちろん!私はラベンダー・ブラウン」
「私はパーバティ・パチル」
「ラベンダーとパーバティね。
本当はお話したいんだけど、私もう眠くて起きていられそうにないのよ。先に寝てもいいかしら?」
列車に乗ったり、湖に落ちたり、なかなか大変な一日だった。
「え、えぇかまわないわ。おやすみ、」
「おやすみなさい」
はあっという間に深い眠りについた。
は一度寝ると、めったなことでは起きない。
だから、が寝た後で同じ部屋でおこなわれたやり取りなど聞けるはずもなかった。
「ねぇ、ハーマイオニーといったわよね?」
ハーマイオニーはラベンダーとパーバティから敵意のようなものを感じて戸惑った。
「あなた、の髪と目について大広間で質問したでしょう?」
「え、えぇ」
「家の問題を口にするのはタブーなのよ。
魔法界の子供なら皆知っていることだわ」
「でも、私マグル出身で知らなかったのよ」
「だったら中途半端に知識をひけらかさないことね。きっとあなたの無神経な質問では傷ついたわ」
「さ、私たちも寝ましょ」
泣きそうな顔をしたハーマイオニーを残して、ラベンダーとパーバティーはベッドに入った。
一方その頃、ハリーはくたくたになりながらも、どうしても気になったことがあってロンに質問をした。
「ねぇ、さっきのハーマイオニーの質問で広間が静まり返ったのはなんで?」
「あぁ、あれ…」
ロンは眉をしかめた。
「ハーマイオニーの言ったとおり、一度に2人もあの髪と瞳を持つ子供が生まれたことは過去にないらしい。
だけど、あの家はとにかく特殊だから、あの家の問題には誰も口を出せない。
魔法界では常識さ」
「それだけの理由?その割には視線が冷たかった気がするけど…」
「…今まで当主は全員男。つまり例外はエリオットじゃなくての方なんだ。
本人もあの時そう言おうとしてただろ?
君がもしそんなことのせいで異端だ、と騒がれたらどんな気持ちになる?
下手にその問題に触れるとが傷つく。
それなのにあいつは無神経に質問したから、皆忌々しく思ったんだ」
「そう…か…」
には「何の悩みもなく大切に育てられたお姫様」というイメージが強かったのでハリーは驚いた。
「そうだ。前から会話に出てくるのお兄さんってどういう人?」
「そうか、ハリーは会ったことがないんだね。じゃあ、覚えておいた方がいい。あの2人は重度のシスコンなんだ」
「シ、シスコン?」
真剣な顔をしてきっぱりと言い切ったロンにハリーは驚いた。
「上の兄エリオットはの8才年上。
金の髪と、緑にも青にも見える不思議な色の瞳を持っている。『記録者』を継ぐのはこの人だろう。
父親に良く似た、優しそうなかっこいい顔をしている。
実際に人当たりも良く、物腰も柔らかで男女問わず人気がある。
勉強も運動もできる、まさにパーフェクトな人間さ。
彼は友達としてに近づく分には問題ない。まぁ、笑顔で脅されたりすることもあるけど」
そこでロンはため息をついてから気を取り直したように説明を続けた。
「下の兄エースはの7才年上。
銀色の髪に赤い瞳の、父親には似ていないけど綺麗な顔だ。母親似らしいよ。
鋭い目つきで愛想がないけど、そのクールな所がいいって、特に女から人気がある。
こちらも文武両道の凄い奴さ。
ただ、こっちは友達としてに近づくのも気をつけないと攻撃される。
共通点があまり無い2人だけど、を中心に世界が回っているって所は同じだから意外と気が合っているみたいだ」
気がつくとハリーの口は、ぽっかり開いていた。
「とにかくあの2人は凄い。と仲良くするなら気をつけなきゃだめだ。
あの2人はのこととなると見境がなくなるからな」
そこまで言うとようやくロンは真剣な表情を崩した。
「絶対に敵に回しちゃいけない2人だけど、との付き合い方にさえ気をつければ問題ないよ。
基本的に2人とも他人に興味ないしね」
それじゃあ、おやすみ。と、ロンが寝た後も、しばらくハリーは唖然としていた。
「何の悩みもなく大切に育てられたお姫様」ハリーのこの認識は間違っていません。
無頓着な本人より周りが気にしてるんです。
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