光の行方 〜 賢者の石編 〜 16
「残念ながら諸君らの友、ルリ殿は8年前に亡くなっておるのじゃよ」
声に驚いてそちらを見ると、長いひげをはやした老人がいた。
「それでは今我らの前にいるこの娘は誰だ」
「彼女はルリ殿が産んだたった一人の娘、じゃ」
「今言った言葉に偽りは無いのだな?ダンブルドア」
「もちろんじゃとも」
「そうか…。非礼を詫びよう、殿」
「我らは人違いをしていたようだ」
突然現れた老人――ダンブルドアと呼ばれていた――の言葉により誤解はあっさり解けたようだ。
「分かってもらえたのならそれでいいです。
それよりあなた達は母の知り合いなのですか?」
「あぁ。ルリは我らの友だ」
「年に一度は我らを訪れ、心安らぐ歌を歌ってくれていた」
「そのお礼に我らはルリに持てる力の全てを貸すと約束した」
「そのルリが8年も前に亡くなっていようとは…」
「残念だ」
言葉は簡素であったが、水中人たちが心の底から悲しがっているのをは感じ取った。
「あの、ありがとうございます」
「何に対する礼だ?」
「母の死を悼んでくださって。
……8年たった今でも母を友と言ってくださって」
さっき水中人たちは瑠璃のことを「友だった」と過去形で言うのではなく、「友だ」と言ってくれた。
それがには嬉しかったのである。
「礼を言われることではない」
「本当のここを述べたまでだ」
「はい、ありがとうございます」
思わず満面の笑みで言ったを見て水中人たちは少し戸惑ったようだった。
「ルリも変わっていたがお前も変わっている」
「なぜ我らを恐れない?」
「何であなた達を怖がるんですか?」
お母様の友達なのでしょう?
そう首をかしげるを見て水中人たちはさらに戸惑ったようにざわめく。
「あの、今度母の話を聞かせてもらってもいでしょうか?」
の申し出に水中人たちは顔を見合わせた。
図々しかったかな、とが謝ろうとした時、代表格らしい水中人が言った。
「かまわない。そなたさえよければ我らはそなたを我らの友として迎えよう」
その返事に今度はが驚いた。
「いいんですか?ありがとうございます」
顔がほころぶのを止められないでいるとのんびりと声がかけられた。
「話はついたようじゃの」
その声には老人の存在を思い出した。
「ごめんなさい、すっかり話し込んじゃって…。誤解を解いてくださってありがとうございました。
あの、あなたは誰ですか?私のことは知っていらっしゃるようでしたが…」
「おぉ、自己紹介がまだじゃったの。わしの名前はダンブルドアじゃ。
ルリ殿の茶飲み友達で、今はホグワーツの校長をやっておる。
もう少しおしゃべりをしたいところなんじゃが、残念なことに時間が無くてのぉ。
早く戻らんと皆が心配する」
「いっけない!忘れてたわ!」
そういえばはボートから落ちたのである。
「でもこの尻尾どうしたら消えるのかしら?極夜分かる?」
黒い小魚――極夜――がうなずいたとたん、と極夜は光に包まれた。
光が消えると極夜は黒猫に、は人間の姿に戻っていた。
それを見てダンブルドアは慌ててと極夜に『泡頭呪文』をかける。
「では戻るとするかの。マーカス、世話になったの」
「我らの方こそすまなかった。、いつでも来るがいい。我らはそなたを待っている」
水中人の代表者(女長)に挨拶をすると、ダンブルドアはと極夜を連れてホグワーツへ向かった。
寄り道がようやく終わりました。次から原作沿いに戻ります。