光の行方 〜 賢者の石編 〜 13
「!」
自分のコンパートメントに戻ろうとしていたは、またしても誰かに呼び止められた。
「あら、ドラコじゃない。久しぶり」
「あぁ、久しぶり。君は今までどこにいたんだい?」
「あちこちおじゃましてたわ」
「クラッブとゴイルに探させたのに見…「あと5分でホグワーツに到着します。荷物は…」
「もうそんな時間?戻らなきゃ」
「戻る必要はないだろ?僕と一緒にいればいい」
「でも友達がいるのよ」
「そいつだって誰か見つけてるさ。これからこの通路は混む。もう戻っている時間なんてない」
は思った――確かにその通りだ。
ここから自分のコンパートメントまでは結構な距離があるし、電車はますます速度を落としている。
ハーマイオニーには悪いが、後で見つけよう。
「分かったわ。一緒に行ってもいいかしら」
「もちろんだ」
ちょうどその時、クラッブとゴイルと女の子が1人コンパートメントから出てきた。
それをみて、マルフォイが紹介をする。
「左からビンセント・クラッブ、グレゴリー・ゴイル、それからパンジー・パーキンソンだ」
「・よ。よろしくね」
そう言って微笑んだを見てクラッブとゴイルは顔を真っ赤にしてに見とれた。
パンジーもやはり一瞬見とれたものの、すぐに我に返りをにらんだ。
電車は完全に止まった。
「イッチ年生!イッチ年生はこっち!」
大声で叫ぶハグリットが見えた。
あふれる人の群れを先頭でクラッブがかきわけ、
マルフォイがを丁寧にエスコートし、
その後ろからパンジーがを睨みながらついていき、
しんがりをゴイルが守った。
その様子はとても目立った。
「ドラコ、そんなに気を使ってくれなくても大丈夫よ」
「何を言っているんだ。女性をエスコートすることは義務だよ」
「それなら私なんかよりパ…「僕は君をエスコートしたいんだ」
パンジーをエスコートしてあげればいいのでは、と言おうとしたが、
が何を言うつもりか察したマルフォイによってさえぎられてしまった。
「おぉー!」
一斉に声が湧き起こった。
狭い道が急に開け、大きな湖のほとりに出たのである。
「4人ずつボートに乗って!」
ハグリットは岸辺につながれた小船を指さした。
「ほら、この船に乗るよ」
まずクラッブが船に乗り、次にマルフォイが乗った。
マルフォイはそのまま座らず、に恭しく手を差し伸べた。
「どうぞ、姫?」
いたずらっぽい口調で――しかしその動作はとても気取っていた――差し出された手を見て、
は呆気にとられた。
恥ずかしい。恥ずかしすぎる。
そのあまりの恥ずかしさに逃げだしたくなったが、それではマルフォイに失礼だと思い直した。
小船は揺れていて手助けなしに乗るのは少し怖そうなのも事実である。
はしばらく悩んだ後、ため息をついてマルフォイの手をとった。
「?!」
その光景をハーマイオニーは少し離れたところで見ていた。
一緒の船にロン、ハリー、ネビルも乗っている。
「あいつまたに付きまとってる!」
ロンが憎々しげにつぶやいた。
「前にもこういう事があったの?」「君達のこと知っているの?」
ハーマイオニーとハリーが同時に質問をした。
「え、君達もを知ってるのかい?」
「僕はダイアゴン横丁で一緒に買い物をしたんだ」
「私はコンパートメントが一緒だったわ。さっきから探してたのがよ」
「僕はとは小さい頃から良く遊んでた…兄弟みたいなものなんだ。
マルフォイとは今日始めて会ったけど話は聞いてる。
エリオットとエース――のお兄さんがよく愚痴をこぼしてた。
『あいつは油断できない』って。
しょっちゅうを夕食に誘ったりもしてたみたい。
まぁ、父親の後ろ盾があるとはいえ、あの2人の脅しに屈しないところだけは凄いと思うけど…」
最後の方は小さくつぶやいただけだったのでハリー達には聞こえなかったようだった。
このことでハリーとロンのマルフォイへの印象がよりいっそう悪くなったのは言うまでもない。
マルフォイなら、たとえ11歳でもエスコートとか完璧にできるマセガキだと思います(笑)