光の行方 〜 賢者の石編 〜    12


双子達と別れた後、は通路をネビルのヒキガエルを探しつつ、黒猫の極夜と散歩していた。

そんな時、突然極夜が駆け出し、1つのコンパートメントの中に入ってしまった。

「極夜?」

は慌てて追いかけ、コンパートメントの中に入った。

コンパートメントの中には男の子が1人いるだけだった。

その男の子の元に極夜は近づいた。

「こら、極夜。勝手に入っちゃ駄目じゃない。ごめんなさい、その黒猫、私のペットなの」

その男の子は極夜を抱き上げたままを見て固まってしまった。

「私の顔に何かついているかしら?」

反応のないことを不思議に思い、は声をかけた。

その反応にまたもや「自分はヒキガエルに似ているのでは…」という疑惑が沸いてきた。

それとほぼ同時にフレッドとジョージの真剣な表情を思い出す。

(あの2人の言葉を信じよう…)

そうが結論付けた時、ようやく男の子から返事があった。

「あ、あぁ、何でもないよ」

「そう?それならいいけど…。あら、極夜が懐くなんて珍しいわ。あなたの名前は?」

極夜がおとなしく男の子に抱かれているのを見ては少し驚いた。

極夜は滅多に以外の人に懐かないのである。

「この子、キョクヤっていうんだ。珍しい名前だね。

僕はセドリック・ディゴリー。3年生だ。セドリックって呼んで。

君の名前も教えてくれる?」

「あら、ごめんなさい。私は。一年生よ。よろしくね」

「こちらこそ。あ、敬語は使わなくていいからね」



はしばらくセドリックの元に留まり話をすることにした。

珍しく極夜が懐いた彼に興味が沸いたのである。

セドリックは喜んでを迎えた。




はセドリックのことを、話すのが上手で頭のいい人だと感じた。

まとっている空気は穏やかでとても優しい紳士だと思った。



セドリックはとてもハンサムだった。

しかしは、これに関してはなんとも思わなかった。

自分の顔や、とても綺麗な顔立ちをしている2人の兄、エリオットとエースを見て育ったため

顔のつくりには反応しなくなっていたのである。

(もう若くないソードですら、とても格好良かった!)




「一年生っていうことは、これから組み分けなんだよね。どこの寮に入りたい?」

「どこでもいいわ」

「どこでも?珍しいね。寮の性質を知らないわけじゃないよね?」

「えぇ。でもどこの寮も勧められたから、きっとどこの寮も素晴しいんだわ。

それに、どこに入っても私は私。それに変わりはないわ」

そう言って笑うにセドリックは驚き、思わず見ほれた。

しかし素早く我に返ると少し慌てて言った。

「確かにどこの寮も素晴しいとは思うけど、自分に合うかどうかはまた別問題じゃないかな?」

「確かにそうなんだけど…。私、自分にどこが合うのかよく分からないのよ。

組み分け帽子があってよかったと思うわ」

その言葉を聞いてセドリックは少し驚いた。

「あれ、君、組み分け帽子のこと知ってるの?」

セドリックの言葉にも驚いた。

「えぇ、兄様達が教えてくれたの。普通は知らないものなの?」

「うん…知っている一年生の方が少ないと思うよ」

「そうなの…じゃあ、あまり言わないことにするわ。

そういえば、セドリックはどこの寮なの?」

「僕はハッフルパフだ。聞いたかも知れないけどハッフルパフも素晴しい寮だよ」

その言葉には微笑んで言った。

「セドリックのような人がいる寮なのだから、その言葉は本当だと思うわ」

その言葉にセドリックは、顔中どころか全身が真っ赤になるような感覚を味わった。



「そろそろ帰るわ。ハーマイオニー…友達が心配してるといけないし」

しばらく話し込んだ後、はそう言って席を立った。

「残念だ…。もう少し話していたかったけど仕方ないね。

ハッフルパフに君が来てくれるととても嬉しい。考えておいて」

「わかったわ。色々とありがとう。あ、そうだわ!」

は出ようとしていた体をセドリックの方に向けなおした。

「私のことはって呼んでね」

「あ、あぁ分かった。じゃあまたね……

「えぇまた会いましょう。あなたと話せて楽しかったわ」

そうしてはセドリックのいたコンパートメントを後にした。





が出て行ってすぐ、セドリックの友人達が帰ってきた。

やけに興奮している。セドリックは驚いた。

「お帰り。まさかハリー・ポッターを見つけられたのかい?」

セドリックの友人達は全員ハリー・ポッターを探しに行っていたのである。

この友人達の野次馬根性は、あまりほめられた物ではないと思う。

「いや、見つけられなかった」

セドリックはやっぱり、と思った。

この大勢の乗っている列車の中で、額の傷だけを頼りに一人の人間を探すのはまず不可能だろう。

しかし、それでは友人達が興奮している理由が分からない。

「でもお前も来るべきだった!今廊下で黒猫を連れた天使とすれ違ったんだ!」

「天使?」

「いや、天使のように綺麗な女の子だ!あんな綺麗な子、見たことがない!」

「きっと新入生だぜ!ハッフルパフに来てくれないかなぁ」

セドリックは思った。

天使というのはのことを言っているのだろう。

確かには素晴しく美しい。

しかし、その外見よりも、の優しい性格や、しっかりとした考え方。

そしてどこか安心する、思わず心を開いてしまうような空気等の方がより素晴しい。

天使のようだという意見には賛成だが、友人のの価値が外見にだけあるような言い方に

セドリックは少し不快感を持った。

しかし彼らはと話したことが無いのだから仕方ないと思い直す。



がこのコンパートメントを訪れたことは彼らには内緒にしておこうと思った。







セドリックとの出会い。彼はいい人だと思います。


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