光の行方 〜 賢者の石編 〜 10
握手の後ハーマイオニーは、はっとしたように顔を上げてきいた。
「あなた、今って言ったわよね?ってあの『記録者』の家?」
「えぇ。正確には現『記録者』は父だけどね」
「そう…。やっぱり産まれた時から魔法界にいるのだから、それだけマグル出身の私より色々なことを知っているのでしょうね。
私、教科書は全部暗記したの。読めるだけ参考書も読んだわ。これだけで足りるといいんだけど…」
不安そうな顔でそれだけ一気に言った。
「ハ、ハーマイオニー?落ち着いて、大丈夫よ。私もほとんど家から出たことないし、教科書を丸暗記もしてないわ。
きっと今のあなたの方が私より物知りよ」
「でもマグル出身者が不利だということに変わりはないと思うの。私、絶対いい成績とらなきゃいけないの」
そうつぶやくハーマイオニーがとてもつらそうに見えたので、はハーマイオニーの隣に座り直して優しく聞いた。
「なぜそんなに思いつめているの?」
「だってお母さん達を心配させられないもの。マグルの学校でもいつも一番だったわ」
「きっとあなたのご両親は、あなたが幸せになることだけを望んでいると思うわ。勉強ができることはとても素晴しいけれど、
そんなに思いつめる必要は無いのよ」
「私の取り柄は勉強だけなのよ!勉強でだけはあの子達に勝てた!それだけは誇れたのよ!
その唯一の取り柄が無くなったら…!」
ハーマイオニーはダムが決壊したかのように、溜め込んできた思いを吐き出した。
「大丈夫よ」
には詳しい事情はまったく分からなかったが、そんなつらそうなハーマイオニーのことを見ていられず
思わずハーマイオニーを抱きしめた。
「頑張ってきたのね。詳しいことは知らないけど、そんな頑張り屋のあなたの取り柄が勉強だけなんて事はないと思うわ。
…つらかったのね。それに耐えて戦うあなたは強いと思うけど、たまには肩の力を抜いて。
泣きたいときに泣く事も、時には大切よ」
初めは驚いて腕から抜け出そうとしていたが、が話し始めるとおとなしくなった。
そして言葉が終わり、頭を撫でられると、こらえきれなくなったように大声で泣き出した。
はハーマイオニーが泣き止むまでずっと頭を撫で続けた…。
「…もう大丈夫よ。ありがとう」
しばらくして泣き止んだハーマイオニーは顔を上げて照れくさそうに笑った。
それを見て安心したはにっこり微笑むと、また向かい側の席に戻った。
「お譲ちゃんたち、お菓子はいらないかい?」
そんな時、お菓子の車内販売をしているおばさんがやってきた。
ハーマイオニーははれた目を見られたくないのか、窓の方を向いて顔を隠した。
「これと、これと、これ、2個ずつください。あと、何か冷やす物あったらください」
「はいはい」
そうしてお菓子と氷をもらった。
はその氷をタオルで包んで渡した。
「はい、これで目を冷やすといいわよ」
「…ありがとう」
ハーマイオニーがそれを受け取り、目を冷やすところまで確認しては本を読み始めた。
その頃、ハリーとロンは多少ぎこちないながらも話しに花を咲かせていた。
その最中にの最後の言葉をハリーは思い出した。
「ねぇ、『記録者の館』って何か分かる?」
「名前のとおりだよ。『記録者』が住んでいる館のことさ」
「じゃあ、『記録者』って何?」
「あぁ、君何も知らないんだっけ。『記録者』っていうのは記録をする者、つまり歴史を書き残す仕事をしている人さ。
といっても全員がそう呼ばれるわけじゃない。そう呼ばれるのは常にたった一人、家の当主だけ」
「家?」
「そう。魔法界で最も古いとされている、とても力のある一族だよ。家は、誰の味方にもつかない代わりに
誰からも干渉を受けない。そうすることで主観の混じらない正確な歴史書ができるんだ。
だから家の歴史書は常に真実が書かれていると言われてる。実際その通りみたいだしね」
「へぇ」
「今度歴史書の著者名を見てみるといいよ。信用されている物のほとんどは家の歴代の当主が書いた物だから。
ところでなんで突然そんなことを聞いたんだい?」
「それは…「坊ちゃん達、何かいらないかい?」
ちょうどそこへ車内販売のおばさんが来てしまったため、その質問は流れてしまった。
私が目を覚ますと、目の前にはとても綺麗な人が座って本を読んでいた。
窓から差し込む日の光がその美しい金の髪の上を踊り、白く滑らかな肌を輝かせる。
まさに一服の絵のような…いや、人間がこのようなものを作れるものか。
その人は、天使か女神のような、いっそ神々しいまでの美しさでそこにいた。
「目が覚めた?…良かった、腫れも引いたみたいね」
声をかけられて我に返った。
「え、えぇ、大丈夫よ。いろいろとありがとう」
そう、この人の前で大泣きしちゃったんだわ…まだ名前しか知らないのに!
あのことは誰にも話したことがなかったのに、気がついたらしゃっべってた。
不思議な子。のそばにいるととても気持ちが落ち着く。
がまとっている、この優しい空気のせいかしら。
この子が実は天使だったって言われてもちっとも不思議に思わないわ。
むしろ納得してしまう。
「ねぇ、あなたはどこの寮に入りたい?」
と一緒の寮に入れたらいいと思う。
「私はどこでもいいわ」
「どこでも?」
「えぇ。どこの寮も勧められたもの。きっとどこの寮も素晴しいのよ」
「でも、寮は一生を左右するとても大切なものよ。そんな適等でいいの?」
「そうね。でもどこの寮に入っても私は私よ。そのことに変わりはないわ。…もし違う寮になっても仲良くしてね」
そういっては綺麗に微笑んだ。
あぁ、にはかなわないわ…。
その微笑にも、考え方にも魅了されていた私を見て、何を勘違いしたのかとても不安そうに聞いてきた。
「やっぱり違う寮の子とは仲良くしたくない?」
慌てて否定する。
「いいえ!こちらこそよろしく」
そしてがほっとした顔をした時、ぽっちゃりとした小柄な男の子が入ってきた。
「ねぇ、ヒキガエル…」
そこまで言っての顔を見て固まった。
…気持ちはよく分かるわ。
は固まった男の子を不思議そうに見た後、はっ!と何かにショックを受けたような顔をしてつぶやいた。
「私ってそんなにヒキガエルに似ているのかしら…」
あぁ、何ていう勘違いを!
私の中では天然と決定付けられた。
一番下はハーマイオニーの視点です。
彼女はあの性格で、魔女だから身の回りで不思議なことが起きる子だったのなら友達をつくりにくかったのでは
という管理人の勝手な想像によりこうなりました。
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