02. I deepened mutual understanding

相互理解を深めました

「ねえ、ルーク!見て、見て!」
「あ?」
「今まで気がつかなかったけど、ここすっごく綺麗!」
「はあ?何のんきなこと言ってんだよ」
「わあ、月も星も綺麗だよ!」
「んなはしゃぐなよな。ったく、ガキかよ」
「初めて見る世界がこんなに綺麗なところで嬉しいわ!」
「………」
「あ、もしかしてあれって海じゃない?」

「あれが……海なのか」

現代日本じゃまず見れないような自然の美しさに驚嘆していると聞こえてきた、ルークの妙に感慨深げなつぶやきを不思議に思って振り返った。

「え?ルークって海見たことないの?」
「ああ…ずっと屋敷に軟禁状態だったからな」
「え…?」

「俺7年前に、マルクト…敵国に誘拐されて記憶喪失になったんだよ。それ以来ずっと安全な屋敷から1歩も外へ出してもらえなかったんだ」
「ご、ごめんなさい、私…」

無神経なことを聞いてしまったと慌てて謝ろうとする私をルークはさえぎった。
「気にすんな。それに…改めて見れば、ここは綺麗だと言えなくもない」

ルークは決して私の方を見ないようにしながら、後半部分をぽつりと呟くように言った。
その言葉が嬉しくて、笑顔でルークを見上げた。

「ねぇ、ルーク。それなら私もあなたも、この世界は初めての者同士だわ。ルークが家に帰る過程で、一緒にいろんなものを見ながら進もう」
「………そうだな。どうせなら楽しんだ方が得だよな」
「そうよ!それにこの旅で、外の世界に出ても大丈夫だと証明できれば軟禁状態も解けるかもしれないわ」
「…そうだな」

一瞬驚いた顔をしたものの、私の言葉に、ルークは笑顔を見せてくれた。

「そうと決まればさっさと帰るか!」
「うん!…でもどうやって?」
「俺にわかるわけないだろ!」

「うーん…あ、川の音が聞こえる。
川の下流には人が住んでることが多いんだって。それに町がなくても海には出られると思う」
「へー。じゃあ川沿いに下ってみるか」
「うん!」

こうして私たちは歩きだした。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「きゃ!」
「うわ?!」

草むらから見たこともない生き物が飛び出してきた。

「な、何、この生物…」
「まさかこいつは魔物?!」
「魔物?!そんなものがこの世界にはいるの?!」
「俺も見るのは初めてだっつーの!」
「ど、どうしよう!走って逃げる?!」
「いや、背後からやられたらまずい。ここで何とか倒しておこう…!」
「え、でもルーク屋敷で軟禁されてたんでしょ?私も全然戦えないわよ」
「俺はヴァン師匠に剣を教えてもらったんだ。このくらい…!」
「剣って…それ木刀じゃない!」
「いいから下がってろ!」

その言葉に従って下がってびくびくしていると、ルークは魔物に切りつけた。
当たるには当たったが、武器が練習用の殺傷力の低い木刀である。
切る、というよりは殴る、と言ったような攻撃では数回攻撃しただけでは倒せないらしく、魔物がルークに攻撃を仕掛けた。

「ルーク!」

自分の口から悲鳴のような声が漏れる。
ルークは魔物の攻撃をうまくよけてもう一度思いっきり魔物を木刀で殴った。
魔物はようやく動かなくなった。

「…ふぅ。た、たいしたことねーな」
「ルーク、大丈夫?怪我してない?!」

慌てて駆け寄ってみて頬に一筋血が滲んでるのに気がついた。
さっきルークが攻撃を仕掛けられた時の恐怖を思い出して、震える手で傷口に恐る恐る触れた。

「んな心配しなくても大丈夫だっつーの」
ルークはちょっと顔を赤くしてぷいっとよそを向いた。

「でもここ怪我してる…痛いよね、怖かったよね。
ルークだけ危険な目にあわせて…」

「だー!そんなこと気にすんな!
俺は男で、ヴァン師匠から剣術も習っていたんだ。
女で全然経験のないお前をついでに守ってやることくらいできるんだよ!!」

頬に寄せていた私の手を掴んで私の方に向きなおると、どなるように言った。

「ルーク…」
「つ、ついでだからな!」
また横を向いてしまったが、手は私の手を掴んだままだ。
その手を両手で包むようにして握りしめる。
手の震えは収まっていた。

「ルーク、ありがとう」
「ふ、ふん」

顔を赤くして不機嫌な振りをするルークをみて、これが噂のツンデレというものかと、少し笑った。


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