拍手お礼SS ハリポタ連載「光の行方」番外編 〜 父の独り言 〜
私の名はソード。
当代の記録者であり、2人の息子と1人の娘をもつ父親でもある。
社会的地位も経済力も十分すぎるほど持っており、子供達もみな優秀で、はたから見れば私には何一つ不安がないかのように思われるだろう。
しかし私には1つとても大きな心配事がある。
しかもその心配は何年も前からのものであり、年々その深刻さを増している。
いちばん上の子供であるエリオットは、金色の髪と緑とも青ともつかない瞳をもつ次期記録者だ。
顔立ちは私とそっくりである。
だが無表情の私とは対照的に常に笑顔を浮かべているエリオットは、世間からは礼儀正しく愛想のいい好青年と評判だ。
…この意見には異論もあるが、それについて語るのはまたの機会にまわすことにする。
2人目の息子、エースは銀の髪に赤い瞳の顔をしている。
冷たい印象をあたえる顔立ちで1人目の妻にそっくりだ。もちろん体格はきちんと男のものだし、女には間違っても見えないが。
エースは世間からは礼儀知らずで傲慢な鼻もちならないやつと噂されているようだ。
だが、そんなエースをうっとりと眺める女や男を私は何度も目撃したことがある。
女性はわからなくもないがなぜ男まで…?自分の心の赴くままにふるまうエースに憧れでも抱いているのだろうか。
気にかかるものはあるが、今あげたような性格の難などは大した問題ではない。
2人とも自分が周囲に与える影響をきちんと理解しているし、何か起こった時に問題を解決するだけの技量も持ち合わせている。
問題はそんなことではなく…。
「兄貴、フクロウ便はまだか?」
「もうすぐ来るんじゃないかな」
これだ。
2人が待っているのは、今年からホグワーツに通うことになった彼らの妹、私の娘からの手紙である。
問題は手紙を待っていることではない。
毎日手紙を待ち、毎日似たような会話が交わされていることが問題なのだ。
手紙が届かなかった日のあの騒動は思い出したくない。
けして2人は暇ではない。むしろ忙しい人間の部類に入るだろう。
だが妹のことになると、どんな重要な用事であってもすべて後回しにしまうのだ。たとえそれがこんなくだらないことであっても。
心配な気持はわからないでもない。私にとっても娘を守ることは最優先事項だ。
が、それは危機が迫った時のことである。普通に暮らしていればそんなに心配する必要もない。
この過保護な2人の息子は世間一般には「シスコン」と呼ばれるのであろう。
今はまだいい。
2人目の妻、瑠璃とそっくりな美しい顔をしているといっても、娘はまだ子供だ。
だがあと3、4年たったら?
言い寄る男たち、それを蹴散らす息子たち、出来上がる屍の山、何も気づかない娘…。
容易に想像できる…!!
私は採点基準は厳しいが、基本的に娘の結婚を望んでいる。
しかし息子たちは相手が誰であっても反対するだろう。
本気になったあの2人を出しぬける人物を私は知らない。
このままでは娘は何も気がつかないまま一生結婚できなくなってしまうのではないか。
そしてそんな娘のそばで息子たちは満足して結婚をしなくなってしまうのではないか…?
それは困る。
結婚にすべての幸せがあるとは思わないが、私は妻たちと出会えて、結婚できて、幸せだった。
早すぎる別れがどんなに深い傷を心に負わせようとも、彼女たちと過ごした日々は何物にも代えがたい輝きがある。
子どもたちにもあの幸せを知ってもらいたい。
しかしそのための最大の障害がその当人である息子たちだとは…!
2人の説得に連敗中で、手を組んだ2人を出しぬける人物に心当たりがない父は、
娘を超える魅力を持った女性、息子を超える力を持った男性と、子供たちがそれぞれ出会えることを心の底から願った。
今日も父は無表情の下で、息子たちと娘のこれからを思い苦悩する――。
無表情で無口な父親、いろいろ考えてます。
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